補強土壁とは?基礎知識や特徴をわかりやすく解説
補強土壁テールアルメ工法の詳細はこちら
目次
1.補強土とは?
(1)補強土とは
盛土内に、帯鋼や鉄筋、高分子系材料等の引張り抵抗および摩擦抵抗を有する補強材を連続的に挿入することにより、せん断抵抗における粘着力項の欠如を補い、盛土全体としての安定性を高めます。
補強効果のイメージ
上記のように、本来なら粘着力がなく、急勾配に盛れないはずの土質材料が、補強材の摩擦力によって急勾配に盛ることができます。
(2)補強土壁のメカニズム
前項でご説明した原理に壁面材をつけたものが補強土壁です。
こぼれようとする土を壁面で拘束することで、作用力と書いている主働領域の土を抵抗と書いてある抵抗領域の力で引き留めていることになります。
下図のように綱引きをしているようなイメージです。
補強材と盛土材は土の自重による鉛直力で摩擦力を発揮しており、全体に渡って一体化されて補強されている状態です。
よって、補強材の敷設されている範囲は補強盛土体として一体化された強度のある塊になっています。
(3)補強土壁工法の起源
補強土壁は1963年にフランスの技術者アンリ・ビダール氏により開発されました。
孫娘と砂遊びしている最中に砂山に松葉を挿入することによって安定することを発見し、近代の補強土工法の祖は帯工補強土壁の「テールアルメ工法」が開発されました。
国内における補強土壁の初施工は1972年で実績は10万件、2200万㎡を超えます。
導入以来、様々な改善・改良が加えられ、現在では一般工法として定着しています。
2.補強土壁の適用範囲と特徴
(1)補強土壁の適用範囲
擁壁の種類には様々あります。
下記は「道路土工擁壁工指針(平成24根年度版)/社団法人 日本道路協会発刊」に記載がある擁壁の一覧です。補強土壁は赤枠に該当します。
補強材を用いた土工構造物のうち、のり面勾配(壁面勾配)が、1:0.6より急なものを「補強土壁」、1:0.6より緩いものを「補強盛土」と定義されています。
各擁壁形式の適用高さ目安をグラフに示します。他擁壁と比較して、補強土壁の適用高さは大きく、特に高壁高の場合に適用されます。約20m程度の構築が可能です。
(2)補強土壁の特徴
補強土壁の特徴は、都市部や山岳部のように道路用地に制約がある場所において、特殊な施工機械がなくとも、鉛直、または鉛直に近い壁面を持つ土木構造物を構築することができること、また、コンクリート擁壁と比較し、高壁高、規模が大きい現場での適用が多いことが挙げられます。
- 垂直もしくは垂直に近い壁面を持つ高盛土(盛土高 H≦20 m)
- フレキシブル構造のため、基礎地盤への荷重は等分布。基礎地盤の不同沈下に追随
- 規格化されたプレハブ工法のため、熟練工や特殊技術が不要
- 最低限の用地幅で構築ができ、土地の有効活用が可能
補強土壁の適用例
3.補強土壁の種類と特徴
(1)補強土壁の種類
道路土工擁壁工指針(平成24年度版)に記載があり、代表的な補強土壁の形式は下記の3種類です。
- 帯鋼補強土壁:コンクリート製または鋼製の壁面材と補強材として鋼製の帯板を用いた補強土壁
- アンカー補強土壁:鋼製の棒鋼及びアンカープレートを用いた補強土壁
- ジオテキスタイル補強土壁:コンクリート製または鋼製枠による壁面材と面状の高分子系のプラスチック材料を補強材とする補強土壁
(2)部材
上記3種類の大きな違いは補強材と補強効果です。
補強材が異なることによって補強形式が変わり、帯鋼補強土壁、ジオテキスタイル補強土壁は摩擦抵抗、アンカー補強土壁は支圧抵抗により補強します。
(3)補強土壁の設計
補強土壁の検討を下記に示します。6つの破壊モードに対して安全性を担保します。
【内的安定検討】
補強材が破断しないように補強材間隔、補強材が引き抜けないように所要の補強材長を算出します。
【外的安定検討・全体安定検討】
補強土壁内部を安定させる補強材長・間隔・強度を決定させた後は、その補強領域を疑似擁壁とみなして外的安定検討を行います。
さらに、補強領域安定やそれを含む盛土全体が、基礎地盤及び盛土斜面すべり破壊や基礎地盤に沈下、液状化のおそれがある場合には、これらに対する検討を行います。
4.補強土壁の活用事例
補強土壁は、幅広い適用性を持ち、あらゆる場所で使用されています。
(1)日本国内採用事例
(2)海外採用事例
参考サイト:テールアルメインターナショナル株式会社